ギデオン

サレモア家の後継者として生まれたギデオンは、貴族の息子でありながら、自身よりはるかに偉大な存在の影に生きていた。その中でも最も尊敬を集めていたのは、不死の騎士グレイストーン――国を護ることを誓った生ける伝説だった。民がその騎士を称える中、ギデオンは傍観者に過ぎず、名ばかりの後継者として父から無能と見なされていた。

だが、グレイストーンが戦場で倒れ、炎と共に蘇った時、ギデオンの内に何かが崩れた。名誉が死をも超えるのなら、野心は何を成し得るのか？彼は家と血筋を捨て、ただ無限の力を約束する神話の書だけを手に旅立った。

その執念の果てに彼が辿り着いたのは、地中深くに眠る巨大で精巧な遺物――滅びた古代文明が「神を超えた存在」と接触するために残した巨大機構だった。ギデオンは発見だけでは満足せず、その複雑な構造を解析し続け、ついに「聖域」への不安定な門をこじ開けることに成功する。

創造の淵にきらめく存在を垣間見たその瞬間、装置は崩壊した。宇宙的な力がゲートから溢れ出し、彼の分子を貫き、装置も門も粉砕された。目覚めたとき、ギデオンはもはやただの人間ではなかった。血や家名に縛られぬ、空間そのものを歪ませる危険な魔術師へと生まれ変わっていたのだ。