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終焉

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アクシューンの最後の戦い

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終焉

アクシューンの最後の戦い

眩い光が玉座の間の高い天井を貫き、白い大理石の柱を引き裂き、かつて聖域だった場所を塵に変えた。金箔の像は粉々に砕け、破壊された壇上に散らばる。歴代の王たちの血統と栄光を描いた大きなタペストリーは燃え尽き、絹糸は空中で灰へと変わった。幾千年の歴史が、一瞬で消え去った。


壁に開いた巨大な裂け目から、奴らが現れた。歪んだ筋肉に覆われ、銀色に輝く外殻をまとったおぞましい化け物たちだ。生きた悪夢の群れが、無数の爪で石を削りながら押し寄せる。奴らは瓦礫を掘り返し、冷たく深みのない瞳で生の気配を探していた。王はすでにいない。アクシューンの玉座は打ち捨てられ、ゼスは飢えていた。


地の底深く、破壊の震動が坑道を走り抜け、鋭い岩肌の天井から砂と瓦礫を降らせた。戦士たちの列が、沈黙のまま厳かに進む。中央には、裂けた衣をまとい、装飾の施された杖を杖代わりに歩く男がいた。煤にまみれた衣にもかかわらず、彼の姿勢は誇り高かった。


「陛下」

前方から静かな声が響く。金の鎧を身にまとった女戦士。その兜にはアクシューン王の親衛隊の紋章が刻まれていた。薄暗い光の中で、彼女の眉は固く寄せられている。

「もうすぐ前室に到着します」


「よくやった、エディラ隊長」

王ゼルネスは深くうなずき、低く響く声で応えた。彼は杖を一定のリズムで地に打ちつけながら進み、杖の表面に刻まれた符文が青白く揺らめいた。

「武器はすぐそこだ。都が持ちこたえていることを祈ろう」


やがて、坑道は巨大な空洞へと開けた。古代の匂いが漂い、空気は重く淀んでいる。四方を囲む高い石壁には、無数の刻印と記号が荒々しく刻まれていた。足音だけが響き、彼らは空間の中心へと進む。そこでは床が浅く沈み、まるで神々が彫ったかのように、縁が滑らかに整えられていた。周囲には符文の輪が描かれ、その紋は壁よりも鮮明に輝いている。


衛兵たちは列を分け、王が一人でその中心へ進む道を開けた。エディラは目を細め、その動きを見守る。王はためらうことなく杖を輪の中心に突き立てた。瞬時に符文が光り、青い光が地を這うように広がっていく。


魔力の流れが変わり、エディラは思わず一歩後ずさった。

「陛下……ここは一体……?」


「揺り籠だ」

王は低くつぶやく。

「遥か昔、この地こそが世界の魔の源だと信じられていた」

「そして今は……我らが最後に立つ場所なのですね」

エディラの声は静かに震えた。


「武器の準備を始める」

王は目を閉じ、深く集中する。その顔には疲労と決意が刻まれていた。低く喉を鳴らすような呪文が彼の口からこぼれる。それは、十年近く王に仕えてきたエディラでさえ、聞いたことのない言葉だった。


王の声が洞窟に反響すると、杖が光に持ち上げられた。部屋全体が息を吹き返すように震え、空気が魔力でうなりを上げる。壁一面の符文が輝き出し、光の筋が血管のように脈打った。生の魔力が霧のように立ち上り、兵たちの周囲を舞い、肌をかすめた。


轟音が静寂を打ち砕き、兵たちは我に返った。背後の坑道から岩が崩れ落ちる音が響き、そのすぐ後に、甲殻の擦れる不気味な音が続いた。


「兵たち、武器を取れ! 王を守れ、命に代えても!」

エディラ隊長の声が混乱の中を切り裂く。彼女は深く息を吸い、胸の前で腕を交差させて敬礼した。漂う魔力が彼女の周囲に集まり、光の爪が両手に形を取った。


三体のゼスが同時に空洞へ飛び込んできた。銀の閃光と筋肉のうねりが入り混じり、獣たちは王めがけて疾走する。エディラは最速の一体に正面から突っ込み、研ぎ澄まされた光の爪でゼスの頭部を下から貫いた。黒い液体が飛び散り、床を染める。


残る兵たちは絶望の中で戦い続けた。命を削りながらも陣形を崩さず、迫り来る怪物に立ち向かう。だが、一人、また一人と倒れていく。それでも彼らは踏みとどまった。エディラは歯を食いしばり、祈るように戦士たちを振り返りながら前へ進む。勇敢な叫びと悲鳴が洞窟に響き渡った。


さらに多くのゼスが押し寄せる。エディラはその全てを迎え撃ち、流れるような動きで切り裂いた。だが、一体を倒すたびに、新たな二体が現れた。


一体のゼスが防衛線を突破し、飢えたように王へと突進した。

エディラは小さく呪いを吐き、戦っていたゼスの首から武器を引き抜くと、すぐさま振り返って追いかけた。

獣は速かったが、彼女はそれよりも速かった。

咆哮とともに並走し、甲殻と肉の境を狙って光の爪を振り抜く。鋭い切先が柔らかい関節を裂き、獣が苦悶の声を上げてのけぞった。


怒りに駆られたゼスは狙いを変え、前脚の鉤爪を振りかざしてエディラに襲いかかる。

エディラは咄嗟に爪を交差させ、衝撃に押し飛ばされた。

巨体の一撃に、彼女の身体が軋む。


息を整える間もなく、もう一体のゼスが兵の列を突き破り、彼女に向かって突進してきた。

反応するより早く、胸部に激しい衝撃を受け、息が詰まる。

光の爪が霧のように消え、彼女の身体は宙を舞い、数メートル先の地面に叩きつけられた。

視界がぐるぐると回り、世界が揺らいだ。


脈打つ血の音が耳を満たし、荒い息が頭の内側で響く。

エディラはゆっくりと身体を起こしたが、視界はまだ揺らいでいた。

霞む視界の向こうで、ゼスが仲間たちを次々と切り裂く様を、ただ見つめることしかできなかった。

生き残っているのは、彼女と王だけ。


もはや誰も立ちはだかる者はなく、獣たちはゆっくりと王へと歩み寄る。

その中心で王は、迫りくる脅威に気づくこともなく、静かに祈りを続けていた。


「陛下!」

エディラの悲鳴が響く。

ゼスが跳びかかり、その爪が振り下ろされた瞬間…

青い光の薄膜が王を包み、攻撃を弾いた。


獣は怒りに唸り声を上げ、再び爪を振るう。

次々と仲間が加わり、光の防壁を何度も叩きつけた。

やがて、エディラの目に映る光は、完全に闇へと消えた。


突如として、ゼスたちの身体が四方へ弾き飛ばされた。

王は無傷のまま立っていた。全身を包む魔力の輝きが、空間そのものを震わせる。

その瞳はサファイアのように光り、洞窟の入り口を鋭く見据えている。


彼は腕を大きく振りかぶり、渦巻く魔力を両手に集めた。

次の瞬間、光が放たれ、洞窟の入口上部を撃ち抜く。

轟音が響き渡り、岩盤が崩れ落ちて入口を完全に塞いだ。


「隊長」

王は静かにエディラへと視線を向ける。

「来なさい。急げ」


エディラは息を整えながら身を起こした。背後では、倒れていたゼスたちの唸り声が再び満ちていく。

彼女は爪を呼び出し、立ち上がる。

「もちろんです。どうすれば…」


「よく聞け」

王は言葉を遮り、目を閉じ、両手を杖の上にかざした。

周囲の光がゆっくりと弱まり、魔力が杖へと注ぎ込まれていく。

杖は形を変え、現実の物質ではなく、純粋なエネルギーそのもののように歪み始めた。

やがてそれは自らを折りたたむように収束し、まばゆい光を放つ完全なピラミッドへと姿を変えた。


「これを持って行きなさい」

王は輝くピラミッドを差し出した。

「そして、この先の部屋へ入るのだ」


エディラは息をのんだ。胸の奥に、不安が渦を巻く。

「ですが… 陛下こそが、それを…」


「いいや」

王は静かに首を振る。

「お前こそが我らの最後の希望だ。民の未来を託せる者は、そなた以外にいない」


エディラの瞳に迷いが宿る。

それでも、王は揺るがなかった。


「その躊躇いも理解している。代償は… 重い」

王は深く息を吐き、空いた手を彼女の肩に置いた。

「我らは永遠に、お前に借りを負うことになる」


沈黙が二人の間を満たす。

若き戦士の肩に、世界の重みがのしかかった。


「…わかりました」

エディラは静かにうなずき、小さくささやいた。

「民のために」

彼女は両手でピラミッドを受け取る。

それは温かくも冷たく、柔らかくも硬かった。

滑らかでありながら、どこかざらついている。

彼女は思う。これは、純粋な魔そのものなのか。


王の表情に一瞬、深い哀しみが浮かんだ。

言葉はなかったが、それが別れの意であることを、エディラは悟った。


その時、ゼスたちが再び動き始める。


「行け」

王の声が響く。

手を振ると、遠くの壁に隠された扉が現れ、ゆっくりと床へ沈んでいった。


エディラは残された勇気のすべてを振り絞り、扉へと駆け出した。

背後では再び戦いの音が響き、石壁に光と影の閃きが反射していた。

振り返ると、王が見事にゼスたちを退けている。

次々と障壁を張り、残された光で反撃を繰り出していた。


扉の前に立つと、それはゆっくりと閉まり始めた。

エディラは前を向こうとしたが、どうしても戦場から目を離せなかった。

崩れた岩の隙間から、無数の黒と銀の影が雪崩のように流れ込み、彼女の胸を締めつける。


「ゼルネス王!」

光の裂け目が細く狭まる中、彼女は叫んだ。

「アクシューンを… 必ず守ります!」


最後の光が消え、扉は完全に閉じた。

残されたのは、静寂と闇だけだった。

文:Echo Seeker Lermy

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