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すべての始まり

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再生

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すべての始まり

再生

再起動プロセスを開始。


再フォーマット中…


25%…


エディラは意識の狭間を漂っていた。記憶の断片が流れるように頭の中をよぎる。

愛した人たちの顔。笑い声。温もり。そして光。

胸の奥に広がる幸福。だがそれも一瞬で消え、戦いの残響と、深く埋もれた痛みが押し寄せてきた。


50%…


次の瞬間、彼女は空高く舞い上がっていた。

眼下にはアクシューンの灯りが星屑のように瞬いている。

故郷の輝きに胸が締めつけられる。あまりにも懐かしく、美しかった。


だがその光景はすぐに変わり始めた。

愛する都は姿を変え、次々と新しい都市が生まれては消えていく。

文明が幾度も栄え、滅び、また別のものに取って代わられていった。


75%…


背後で何かが動いた気配に、エディラは振り返った。

闇の中から霧のような影が現れる。

近づくにつれ、その身体が青い光に照らされ、姿を現した。


それは滑らかな銀色の装甲に包まれ、金の縁取りが美しく輝いていた。

まるで人の筋肉のようにしなやかに動くその四肢は、機械でありながら生きているかのようだった。


身体の中を魔力が脈打つように流れ、胸部を走る細い青い線が腕の先へと伸びている。

その液体のようなサファイアの光は首から頭部の鋭い仮面へと注ぎ込まれ、無表情の顔面を照らしていた。


そして何より目を奪われたのは、背中から広がる翼だった。

巨大な結晶のような刃が一枚ずつ展開し、まばゆい光を放つ。

鋭く尖った脚は地面からわずかに浮かび、すでに高いその姿をさらに壮麗なものにしていた。


99%…


その存在はゆっくりと鋭い爪のついた手を差し伸べた。

エディラは一瞬ためらったが、機械の中から伝わる不思議な温もりに惹かれた。

どこか懐かしく、安心できる感覚。

彼女は勇気を振り絞り、その手をしっかりと握り返した。


エデン、再起動完了。


激しい衝撃とともに、エデンは目を覚ました。

視界が安定するまでに少し時間がかかったが、やがて目の前には、信じられないという表情の女性が立っていた。

疲れ切った体を無理に動かし、エデンはかすかに腕を上げた。

その瞬間、女性は驚きのあまり大きく身を引き、息をのんだ。


「うそ… 動いた…?」

女性の声は震え、瞳が興奮に輝いていた。


「動いた?」

エデンは自分の手を見下ろす。

それは…自分の手、のはずだった。

だが胸の奥に冷たい空洞が広がる。

金属の腕を見つめながら、彼女は無意識に指を動かす。

内部の機構が静かに音を立て、指がしなやかに曲がった。


「信じられない…!」

女性は興奮を隠せず叫んだ。

「失われた兵器は本当に存在したなんて!」


「失われた…?」

エデンの声はかすかに震え、頼りなく空気を震わせた。


「しかも話せるなんて!」

女性は叫き、口をぽかんと開けたまま固まった。

そして次の瞬間、彼女は青いスーツのポケットを慌ただしく探り、滑らかな黒い端末を取り出す。

ピッという音とともに赤い光が点灯した。


「名前は? いつ作られたの? 創造者は誰? 最後に覚えているのは何?」

矢継ぎ早の質問が止まらない。

エデンの頭は混乱し、世界がぐるぐると回り始めた。


「もういい」

エデンはゆっくりと立ち上がった。

静寂の中に、金属がわずかに擦れる音が響く。


その姿は目の前の奇妙な女をはるかに見下ろしていたが、女の瞳には怯えの色がなかった。

むしろ強い意志を宿したまま、彼女は端末を構え続けている。


「王は…どこだ?」


「王?」

女は小さく首をかしげ、考え込むように答えた。

「この星に王なんて、もう…少なくとも千年は存在してないわ」


その瞬間、エデンの手が素早く伸び、女の胸当てを掴み上げた。

女は短い悲鳴を上げ、持っていた端末が床に落ちて砕ける。鋭い音が石の部屋に響いた。


「嘘をつくな。後悔するぞ」

エデンは低く唸り、怒りを押し殺した声で言った。

「もう一度聞く。王はどこにいる」


「う、嘘なんてついてない!」

女は慌てて叫んだ。

「もし伝承が本当なら、アクシューンの王国は千年前に消えたの! 私はずっとその謎を研究してきたのよ、信じて!」


「私は…国を守るために、すべてを捧げた」

エデンは呟いた。その声には信じがたいという重さがあった。

女の瞳を見つめ、そこに偽りや悪意を探す。

だが、見えたのは恐怖と、必死の誠実さだけだった。


エデンはしばらくの沈黙のあと、渋々手を離した。

女は床に落ち、息を整えながらエデンを見上げる。


「私が国を守れなかったと…? そんなはずがない」


エデンは拳を握りしめ、背中から翼を展開させた。

節ごとに機構が音を立てて開き、青白い光が洞窟を照らす。


「自分の目で確かめる」

そう言い放つと同時に、脚部のスラスターが点火し、強烈な光と音を放った。

エデンの体は一気に天井へと突き上がり、岩盤を容易く突き破っていく。


「待って!」

女は叫び、飛び散る破片から顔をかばった。

やがて静けさが戻ると、彼女は慌てて立ち上がり、まだ微かに光を放つ壊れかけの端末を拾い上げる。

素早く指を走らせ、いくつものコマンドを打ち込んだ。


数秒後、二機のドローンが起動音を立て、青い光跡を追うように上空へと飛び去った。


エデンは地殻を突き破り、空へと駆け上がった。

上昇を続けるうちに、大気が薄くなり、音のない静寂が訪れる。

やがて彼女は、地平線を見渡せるほどの高みで、静かに宙に浮かんでいた。


そこに広がっていたのは、まったく知らない世界だった。

王都の優美な尖塔も、塔を飾る旗も、精緻に刻まれた王国の紋章も、すべて消えていた。

愛した故郷の面影は、跡形もない。


その代わりに広がっていたのは、信じがたいほど巨大な銀色の塔の群れだった。

それぞれの塔はまばゆい光を放ち、何百もの人工の灯が無数の色で輝いている。

地上から幾重にも伸びる道が、重力を無視したかのように空中を螺旋を描いて走り、

そこには奇妙に滑らかな乗り物が群れを成して空を行き交っていた。


あの女の言葉は本当だったのか。

私は本当に失敗したのか。


最後の戦いの記憶は、霞がかった影のようにぼんやりとしている。

エデンは必死に思い出そうとしたが、脳裏に浮かぶのは、

扉が閉じる直前のゼルネス王の悲痛なまなざしと、

戦いの最中に自分を突き動かしたあの激しい怒りだけだった。


やがて彼女はゆっくりと地上へ降りていった。

胸を締めつけるような喪失感に、心が押し潰されそうになる。

泣きたいと思っても、冷たい金属の体からは一滴の涙も流れない。

いつから私はこんな姿になったのか。

それなのに、どうしてこれほど自然に感じるのだろう。


本能のように、エデンは振り返った。

右腕を構え、照準を上空の穴へと合わせる。

その瞬間、信じられない速度で二機のドローンが穴から飛び出した。


エデンは即座に一機をロックオンし、腕部のキャノンから弾丸を連射した。

弾は次々と命中し、ドローンのプロペラが粉々に砕ける。

火花とともに黒煙を上げ、機体は地面に落ちて小さな爆発を起こした。


もう一機。戦っている間に見失っていたそれを、遠くに見つける。

ドローンの砲口が赤く熱を帯び、発射の準備をしている。

エデンは即座に演算を走らせ、キャノンを解除し、代わりに爪を展開した。

殺気を帯びて飛びかかる。攻撃の前に叩き落とすつもりだった。


だが、ドローンは予想外の動きを見せた。

エデンの頭上へと一気に上昇し、真下へ向けて光線を放つ。

回避しようと姿勢を変えたが、勢いを殺しきれない。

ビームが直撃し、全身に電流が走った。


視界が白く弾け、処理系がショートする。

体が動かない。

エデンはただ、見上げるしかなかった。

次の一撃を放とうと、ドローンの砲身が再び光を帯びていく。


「待って!」

聞き覚えのある声が響いた。ドローンの動きが止まる。

逃げ出したい気持ちを抑えながらも、エデンは声のした方へ視線を向けた。


「はぁ…はぁ… あなたのあの信じられない速さ、資料には一言も書いてなかったわ…」

息を切らしながら、あの見知らぬ女がエデンの前に立ち止まった。


「何の用だ」

エデンの声は鋭く、心の中には怒りと困惑が渦巻いていた。

この女が何かを知っているのは確かだ。

だが警戒を解くわけにはいかない。さっきのドローンも彼女のものだったのだから。


「仕切り直しましょう」

女は柔らかい笑顔を見せた。

「私はデッカー。考古学者であり、科学者であり、そして天才よ」

黒髪の女は明るく笑いながら頭を振った。

「ごめんごめん、つい口が滑っちゃって」


「質問には答えていない」

エデンが冷たく言い放つと、デッカーは少しむっとした表情を浮かべた。


「今から答えるってば」

そう言って腕を組み、彼女の顔に穏やかな影が差す。

「あなた…この時代の人じゃないんでしょ? 私に手伝わせて」


エデンは何も言わなかった。

女の言葉は正しかった。

この世界はあまりにも奇妙で、自分が戦ったゼスとの戦いの結末も分からない。

生き残りはいたのか。味方を探すべきなのか。

そもそも、それが今の自分にとってどういう意味を持つのかさえ、分からなかった。


「混乱して当然よ。でもね、この世界であなたの気持ちを少しでも理解できる人がいるとしたら、それは私なの」

デッカーは手を差し出した。

「だからお願い。私がこの世界のことを教える。その代わりに、あなたの世界を教えて。いい?」


沈黙が二人の間に落ちた。

科学者の瞳が真っ直ぐにエデンを見つめる。


「私の仲間を探す手助けもしてもらう」

エデンは低い声で言った。その口調にはまだ警戒の色が残っている。


「もちろん!」

デッカーは即座に答え、満面の笑みを浮かべた。


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