
絆を断つ者:Vael'Zhurin の探究
『絆を断つ者:Vael'Zhurin の探究』抜粋
続きを読む
絆を断つ者:Vael'Zhurin の探究
『絆を断つ者:Vael'Zhurin の探究』抜粋
それは Vael'Zhurin ――束縛の谷――と名付けられた。人々が絆の危険を忘れてしまうよりも遥か以前に。
私は、エコー・シーカーのカスレン、いま谷の奥深く、忘れ去られた墓の裂け目に立っている。
空気は埃と古き魔法の残滓で満ち、石に何世紀も抱え込まれた息のようにまとわりついている。私のランタンの光は、壁に打ち込まれた古代の鉄環を照らし出す。腐食した枷の残骸は、かすかな、怨念のような力を今なお震わせている。束縛の呪縛――その名すら歴史に忘れられた名匠たちが刻んだ術式は朽ち果てかけているが、死には至っていない。私は触れる勇気を持たない。
壁そのものが、長き監禁の証言者である。深く刻まれた爪痕――最初は混乱し、やがて秩序を帯びる。日々、月々、あるいは世紀の数を示す刻み。そしてその傍らには謎かけ、冗談、嘲りの言葉――鋭い爪とさらに鋭い知性で刻まれたもの。そこには怒りがある。だがそれは単純なものではない。舞台を奪われたトリックスターの怒りであり、希望を奪われた獣のそれではない。
それは、ただの激怒よりも私を不安にさせる。
私はすべてを記録するだろう。あらゆる刻印、あらゆる傷跡、石に囚われたあらゆる苦い囁きを。世界は思い出さねばならない――そして、備えねばならない。
かつて囚われた猿王は、今やどこかの地で解き放たれているのだから。
そして――彼は笑っている。
エコー・シーカー カスレンによる記録